中華人民共和国商業銀行法
(1995年5月10日第8回全国人民代表大会常務委員会第13回会議で採択 2003年12月27日の第10回全人代常務委員会第6回会議の「『中華人民共和国商業銀行法』改正に関する決定」に基づいて修正)
第一章 総則
第1条 商業銀行及び預金者その他の顧客の法的権利を保護し、商業銀行の行為を規則化させ、信用貸し資産の質を高め、監督、管理を強化し、商業銀行の健全な経営を確保し、金融秩序を維持し、社会主義市場経済の発展を促進するため、本法を制定する。
第2条 本法で商業銀行とは、本法及び「中華人民共和国会社法」に基づいて設立された、公衆の預金を受け入れ、貸付けをし、決済などの業務を行う企業法人をいう。
第3条 商業銀行は、次の各号に掲げる業務の一部または全部を取扱うことができる。
1 公衆の預金を受け入れる
2 短期、中期及び長期貸付けをする
3 国内外の決済をする
4 手形の引受と割引をする
5 金融債を発行する
6 公債の発行、償還を代行し、または引受をする
7 公債・金融債を売買する
8 コール取引をする
9 外貨を売買し、または代理売買する
10 バンクカード業務をする
11 信用状サービス及び担保を提供する
12 金銭の受払い及び保険業務を代行する
13 貸金庫サービスを行う
14 国務院銀行業監督管理機構の承認を受けたその他の業務
営業範囲は商業銀行が定款で定め、国務院銀行業監督管理機構の承認を受ける。
商業銀行は、国務院銀行業監督管理機構の承認を得た上、外貨の決済・為替売買を取扱うことができる。
第4条 商業銀行は安全性、流動性、収益性を経営原則とし、自主経営、リスク自己負担、損益自己負担及び自己責任制をとる。
商業銀行は法律に則って業務を行い、いかなる組織及び個人の干渉も受けない。
商業銀行はその全法人財産をもって独立して民事責任を負う。
第5条 商業銀行と顧客の業務取引では、平等、自由意思、公平及び誠実信用の原則に従うものとする。
第6条 商業銀行は、預金者の適法な権益がいかなる組織及び個人の侵害も受けないよう保証するものとする。
第7条 商業銀行は信用貸し業務を行う場合、借入者の信用状態を厳しく審査し、担保を取って、貸付金を期日までに回収するようにする。
商業銀行が法律に則って借入者から満期になる貸付金の元本と利息を回収することは、法律で保護される。
第8条 商業銀行は業務を取扱う際、法律、行政法規の関連規定を遵守するものとし、国家利益、社会の公共利益を損なってはならない。
第9条 商業銀行は業務を取扱う際、公正競争の原則を遵守するものとし、不正競争をしてはならない。
第10条 商業銀行は法律に則って国務院銀行業監督管理機構の監督・管理を受けるものとし、ただし、法律で関連業務についてほかの監督管理機関または機構の監督管理を受けると定められた場合、その規定による。
第二章 商業銀行の設立及び組織体制
第11条 商業銀行の設立に当たっては、国務院銀行業監督管理機構の審査、承認を受けるものとする。
国務院銀行業監督管理機構の承認を受けなければ、いかなる組織及び個人も公衆の預金を受け入れるなど商業銀行の業務を取扱ってはならず、またいかなる組織も組織名に「銀行」という字句を使用してはならない。
第12条 商業銀行の設立に当たっては、次の各号に掲げる条件を備えなければならない。
1 本法及び「中華人民共和国会社法」の規定に適合する定款があること。
2 本法の規定に適合する登録資本金の最低額を有すること。
3 専門知識及び業務経験をもつ取締役、高級管理職がいること。
4 整った組織体制及び管理制度をもつこと。
5 基準に適した営業場所、安全防備措置及び業務に関連するその他の施設があること。
なお、商業銀行の設立は、ほかの健全性確保の条件に適合しなければならない。
第13条 全国規模の商業銀行の設立に必要な登録資本金の最低額は10億人民元とする。都市商業銀行の設立に必要な登録資本金の最低額は1億人民元とし、農村商業銀行の設立に必要な登録資本金の最低額は5000万人民元とする。なお、登録資本金は払込資本とする。
国務院銀行業監督管理機構は、健全性基準に基づいて、登録資本金の最低額を調整することができる。ただし、前項に定める限度額を下回ってはならない。
第14条 商業銀行の設立に当たって、申請者は国務院銀行業監督管理機構に次の各号に掲げる書類、資料を提出するものとする。
1 申請書。申請書には設立予定の商業銀行の名称、住所、登録資本金、業務範囲などが明記されていること。
2 実行可能性調査報告書。
3 国務院銀行業監督管理機構に定められている提出すべきその他の書類、資料。
第15条 商業銀行設立の申請について審査した結果が、本法第14条の規定に適合するとされたときは、申請者は正式の申請書に必要事項を記入した上、次の各号に掲げる書類、資料を提出するものとする。
1 定款のドラフト
2 就任予定の取締役と高級管理職の資格証明
3 法定の出資検証機構が発行した出資検証証明
4 株主名簿とその出資額、株の持ち分
5 登録資本金の5%以上を保有する株主の信用状態の証明及び関連資料
6 経営方針及び計画
7 営業場所、安全防備措置及び業務に関連するその他の施設に関する資料
8 国務院銀行業監督管理機構が定めるその他の書類、資料
第16条 設立承認を受けた商業銀行は、国務院銀行業監督管理機構から営業許可証の交付を受け、その許可証にて工商行政管理機関で登録手続をし、営業登記簿謄本を受け取る。
第17条 商業銀行の組織形態、組織体制については「中華人民共和国会社法」の規定を適用する。
本法の施行以前に設立された商業銀行の組織形態、組織体制が「中華人民共和国会社法」の規定に対する適合性で完全でない場合は、引き続き従来の規定を踏襲することができるものとし、なお、前項の規定を適用する期日は国務院が定める。
第18条 国有独資商業銀行には監事会を設ける。監事会の選出方法は国務院が定める。
監事会は国有独資商業銀行の信用貸し資産の質、資産と負債の比率及び国有資産の価値維持・増進などの状況並びに高級管理職の法律、行政法規または定款に対する違反行為及び銀行の利益を損なう行為について監視する。
第19条 商業銀行は業務上の必要に応じて、中華人民共和国の内外に付属組織を設けることができる。付属組織を設けるには、国務院銀行業監督管理機構の審査、承認を受けなければならない。中華人民共和国内の付属組織は、行政管理区画別には設けない。
商業銀行は中華人民共和国内に付属組織を設ける場合は、規定に従ってその経営規模に応じた運転資金を支給するものとする。各付属組織に支給される運転資金の合計は、本店の資本金総額の60%を超えてはならない。
第20条 商業銀行の付属組織を設けるとき、申請者は国務院銀行業監督管理機構に次の各号に掲げる書類、資料を提出するものとする。
1 申請書。申請書には設置予定の付属組織の名称、運転資金の額、業務範囲及び本店と付属組織の所在地などを記載するものとする。
2 申請者の最近二年間の財務報告。
3 就任予定の高級管理職の資格証明。
4 経営方針及び計画。
5 営業場所、安全防備の措置及び業務に関連するその他の施設に関する資料。
6 国務院銀行業監督管理機構が定めたその他の書類、資料。
第21条 設置承認を受けた商業銀行の付属組織は、国務院銀行業監督管理機構から営業許可証の交付を受け、同許可証を示して工商行政管理機関で登記をし、営業登記簿謄本を受け取る。
第22条 商業銀行は付属組織に対して、銀行全体の統合した会計処理、統合した資金調達、ランク別管理の財務制度を実施する。
商業銀行の付属組織は法人格を持たず、本店による権限付与の範囲で法律に基づいて業務を行い、その民事責任は本店が負う。
第23条 設立承認を受けた商業銀行及びその付属組織は国務院銀行業監督管理機構がこれを公告する。
商業銀行及びその付属組織が営業登記簿謄本を取得した日から正当な理由がなく6ヶ月を超えて開業しない、または開業後連続6ヶ月以上自ら業務を停止した場合には、国務院銀行業監督管理機構が営業許可証を取り上げ、その旨を公告する。
第24条 商業銀行は次の各号に掲げる変更事項のいずれかがある場合は、国務院銀行業監督管理機構の承認を受けるものとする。
1 名称の変更。
2 登録資本金の変更。
3 本店または支店・出張所の所在地の変更。
4 業務範囲の調整。
5 資本総額または株式総額の5%以上を保有する株主の変更。
6 定款の改正。
7 国務院銀行業監督管理機構の定めるその他の変更事項。
取締役、高級管理職の更迭にあたっては、その就任資格について国務院銀行業監督管理機構の審査を受けるものとする。
第25条 商業銀行の分離、合併には、「中華人民共和国公司法」の規定を適用する。
商業銀行の分立、併合は、国務院銀行業監督管理機構の審査、承認を受けるものとする。
第26条 商業銀行は法律、行政法規の規定に基づいて営業許可証を使用するものとする。営業許可証の偽造、変造、譲渡、賃貸、貸与を禁止する。
第27条 次の各号のいずれかに該当する場合には、商業銀行の取締役または高級管理職を務めることができない。
1 横領、賄賂、財産侵奪、財産流用の罪または社会・経済秩序破壊の罪を犯して、刑罰の判決を受け、または犯罪により政治的権利を剥奪される者。
2経営不振により破産し、清算された会社、企業の取締役または工場長、マネージャとして、当該会社、企業の破産に個人的責任がある者。
3 違法により営業登記簿謄本を取り消された会社、企業の法人代表者として、個人的責任がある者。
4 比較的多額の個人債務が返済期限が来ても完済できない者。
第28条 いかなる組織または個人も商業銀行の株式総額の5%以上を購入する場合は、事前に国務院銀行業監督管理機構の承認を受けるものとする。
第三章 預金者保護
第29条 個人の貯蓄預金業務を扱う商業銀行は、自由意思による預入れ、自由な引出し、利息の支払い、預金者保護の原則を守るものとする。
個人の貯蓄預金について、商業銀行はいかなる組織または個人からの照会、凍結、差引き請求も拒否する権利を有する。ただし、法律に別段の定めがある場合を除く。
第30条 組織の預金について、商業銀行はいかなる組織または個人からの照会請求も拒否する権利を有する。ただし、法律、行政法規に別段の定めがある場合を除く。また、いかなる組織または個人からの凍結、差引き請求も拒否する権利を有する。ただし、法律に別段の定めがある場合を除く。
第31条 商業銀行は中国人民銀行の定める預金金利の上下限に基づいて預金金利を決め、これを公表するものとする。
第32条 商業銀行は中国人民銀行の規定に従って、中国人民銀行に預金準備金を預け、十分な支払準備金を残すものとする。
第33条 商業銀行は預金の元本及び利息の支払いを保証するものとし、預金の元本及び利息の支払いを引き延ばしたり、拒否したりしてはならない。
第四章 貸付けおよびその他の業務の基本規則
第34条 商業銀行は国民経済・社会発展の必要に基づき、国の産業政策の指導のもとで貸付け業務を行う。
第35条 商業銀行の貸付けは、借入金の使途、借入者の返済能力、返済方法などの状況を厳格に審査するものとする。
商業銀行の貸付けは、審査と貸付けとの切り離し、ランク別の審査・承認制度をとるものとする。
第36条 商業銀行の貸付けでは、借入者は担保を提供するものとする。商業銀行は保証人の返済能力、担保物件、質物の権利所属及び価値並びに抵当権、質権の実行可能性を厳格に審査しなければならない。
商業銀行による審査、評価を経て、借入者の信用状態がよく、借入金が返済できることが確認された場合には、担保を提供しなくてもよい。
第37条 商業銀行の貸付けは、借入者と書面による契約を結ぶものとする。契約には貸付けの種類、借入金の使途、金額、利率、返済期間、返済方式、違約責任その他双方が必要と認める事項を定めるものとする。
第38条 商業銀行は中国人民銀行が定めた貸出利率の上下限に基づいて、貸出利率を決めるものとする。
第39条 商業銀行の貸付けでは、次の各号に掲げる資産負債比率管理の規定を遵守するものとする。
1 自己資金比率は8%を下回ってはならない。
2 貸出残高と預金残高の比率は75%を超えてはならない。
3 流動資産残高と流動負債残高の比率は25%を下回ってはならない。
4 同一借入者に対する貸出残高と商業銀行の資本残高との比率は10%を超えてはならない。
5 資産負債比率管理に関する国務院銀行業監督管理機構のその他の規定。
本法の施行前に設立された商業銀行の資産負債比率が前項の規定に適しない場合には、一定期間内に前項の規定に適合させるものとする。具体的取扱いは、国務院が定める。
第40条 商業銀行は関係者に信用貸付けをしてはならない。また他の借入者の貸付けよりよい条件で関係者に担保付貸付けをしてはならない。
前項で関係者とは、次の者をいう。
1 商業銀行の取締役、監事、管理職、融資担当者とその近親者。
2 前号に掲げる者が出資し、または高級管理職についている会社、企業その他の経済組織。
第41条 いかなる組織及び個人も商業銀行に貸付けまたは担保を強要してはならない。商業銀行はあらゆる組織及び個人による貸付けまたは担保の強要を拒否する権利を有する。
第42条 借入者は期限通り借入金の元本及び利息を支払うものとする。
借入者が期限が来ても担保付貸付けを返済しない場合は、商業銀行は法律に則って、保証人に貸付金の元本及び利息の支払いを請求し、または当該担保物件について優先的に弁済を受ける権利を有する。商業銀行が抵当権、質権の行使によって得た不動産または株式は、取得の日から2年以内に処分するものとする。
借入者は期限が来ても信用貸付けを返済しない場合には、契約の定めに従って責任を負うものとする。
第43条 商業銀行は中華人民共和国内で信託投資及び証券取扱業務に従事してはならず、自用以外の用途に供する不動産または銀行以外の金融機関及び企業に投資してはならない。ただし、国が別段の定めがある場合を除く。
第44条 手形引受、為替、代金取立などの決済業務を行う商業銀行は、所定の期限通りに決済して受払い・記帳するものとし、伝票・手形を押さえたり、規定に違反して手形を不渡りにしたりしてはならない。引受け、受払い・記帳の期限に関する規定は公表するものとする。
第45条 商業銀行が金融債を発行し、または海外で借入れをするときは、法律、行政法規の規定により承認を受けるものとする。
第46条 コール取引は、中国人民銀行の定めた規定を守るものとする。コールマネーを使って固定資産貸付けをし、またはコールマネーを投資に充てることを禁止する。
コールローンは、預金準備金を全額預け、支払準備金を十分に残し及び中国人民銀行の期限の来た借入金を返済した後の遊休資金に限られる。コールマネーは手形及び為替交換じりの決済並びに臨時運転資金に充てる。
第47条 商業銀行は規定に反して利率を引上げまたは引下げ並びにその他の不正手段を使って預金を受け入れ、貸付けをしてはならない。
第48条 企業や公的機関は自主的に一つの商業銀行の営業場所を選んで、日常の振替決済及び現金受払いを行う一つの基本口座を開くことができる。二つ以上の基本口座を開いてはならない。
いかなる組織及び個人も個人名義の口座を開いて組織の資金を預け入れてはならない。
第49条 商業銀行の営業時間は、顧客の利便を図るようにし、これを公告するものとする。商業銀行は公告した営業時間に営業するものとし、任意に営業を停止し、または営業時間を短縮してはならない。
第50条 商業銀行は業務を扱い、サービスを提供するとき、規定に従って手数料を徴収する。なお、費用徴収の項目や基準は国務院銀行監督管理機構と中国人民銀行が責任の割り当てに則って、各自に国務院価格管理機関と共同して制定するものとする。
第51条 商業銀行は国の関連規定に従って、財務会計諸表、業務契約その他の資料を保存するものとする。
第52条 商業銀行の職員は法律、行政法規及びその他の業務管理諸規定を遵守するものとし、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
1職務上の立場を利用して、賄賂を要求・収受し、または国の規定に違反していろんな名目でリベート、コミッションを受け取る。
2職務上の立場を利用して、自行または顧客の資金を横領・流用・侵奪する。
3規定に違反し、私情にとらわれて親族・友人に貸付けまたは担保を提供する。
4他の経済組織で兼職する。
5法律、行政法規及び業務管理規定に違反するその他の行為。
第53条 商業銀行の職員は在職中に知り得た国家秘密、トレードシークレットを漏らしてはならない。
第五章 財務会計
第54条 商業銀行は法律及び国の共通する会計制度並びに国務院銀行業監督管理機構の関連規定によって、自行の財務・会計制度の構築と健全化を進めものとする。
第55条 商業銀行は国の関連規定に従って、業務活動及び財務状態を真実で相違なく記録し、全面的に反映し、また、年度財務会計報告を作成し、遅滞なく国務院銀行業監督管理機構及び中国人民銀行と国務院財政部門に会計諸表を提出するものとする。商業銀行は法定の会計帳簿以外に、会計帳簿を設けてはならない。
第56条 商業銀行は毎会計年度終了後3カ月以内に、国務院銀行業監督管理機構の規定に従って、前年度の営業成績及び会計監査報告を公表するものとする。
第57条 商業銀行は国の関連規定に従って、貸倒準備金を積み立て、貸倒を償却するものとする。
第58条 商業銀行の会計年度は西暦の1月1日から12月31日までとする。
第六章 監督管理
第59条 商業銀行は関連規定に従って、自行の業務規則を定め、自行の危機管理と内部統制制度の構築と健全化を進めものとする。
第60条 商業銀行は自行の預金、貸付け、決済、貸倒れなどの状況について点検、検査制度の構築と健全化を進めものとする。
商業銀行は付属組織に対して、恒常的な点検及び検査による監督を行うものとする。
第61条 商業銀行は規定に従って、定期的に国務院銀行業監督管理機構及び中国人民銀行に貸借対照表、損益計算書その他の財務会計諸表及び資料を提出するものとする。
第62条 国務院銀行業監督管理機構は本法第3章、第4章、第5章の規定により、商業銀行の預金、貸付け、決済、貸倒れなどの状況について随時検査、監督を行う権限を有する。検査、監督に当たって、検査監督要員は適法な証明書類を呈示するものとする。商業銀行は国務院銀行業監督管理機構の要求に従って、財務会計資料、業務契約及び経営管理面のその他の情報を提供するものとする。
中国人民銀行は『中国人民共和国中国人民銀行法』第32条、第34条の規定に基づいて、商業銀行に対して検査監督する権限を有する。
第63条 商業銀行は法律に従って、会計監査機関による会計監査と監督を受けるものとする。
第七章 接収及び終了
第64条 商業銀行で信用危機がすでに発生し、または発生する恐れがあり、預金者の利益に重大な影響が及ぶ際には、国務院銀行業監督管理機構は当該銀行を接収することができる。
接収の目的は接収される商業銀行に対し必要な措置を講じることによって、預金者の利益を守り、商業銀行の正常な経営能力を回復させることにある。接収される商業銀行の債権債務関係は、接収により変わることがないものとする。
第65条 接収は国務院銀行業監督管理機構が決定し、かつ実施させる。国務院銀行業監督管理機構による接収の決定には、次の各号に掲げる内容を記載するものとする。
1接収される商業銀行の名称。
2接収の理由。
3接収組織。
4接収期間。
接収の決定は国務院銀行業監督管理機構がこれを公告する。
第66条 接収は接収決定の実施の日から始まる。
接収開始の日から、接収組織が商業銀行の経営管理権限を行使する。
第67条 接収期間が満了したとき、国務院銀行業監督管理機構は延長を決定することができる。ただし接収期間は最長2年を超えることができない。
第68条 次の各号のいずれかに該当する場合には、接収は終了する。
1接収決定に定める期間が満了し、または国務院銀行業監督管理機構が決定した接収の延長期間が満了する。
2接収期間の満了前に、当該商業銀行が正常な経営能力を回復している。
3接収期間の満了前に、当該商業銀行が合併され、または法律によって破産宣告される。
第69条 商業銀行は分立、合併によりまたは定款に定める解散事由が生じて解散する必要があるときには、解散の理由及び預金の元本及び利息の支払いなどの債務完済計画を添付して、国務院銀行業監督管理機構に申請するものとし、国務院銀行業監督管理機構の承認を受けてから解散する。
商業銀行が解散するときには、法律により清算委員会を設置し、清算を行い、完済計画に従って遅滞なく預金の元本及び利息などの債務を返済するものとする。国務院銀行業監督管理機構は清算の過程を監督する。
第70条 商業銀行が営業許可証取消しにより撤廃されるときには、国務院銀行業監督管理機構は法律により遅滞なく清算委員会を設置させ、清算を行い、完済計画に従って預金の元本及び利息などの債務を適時に返済させるものとする。
第71条 商業銀行が期限の来た債務の支払いができないときは、国務院銀行業監督管理機構の同意を得て、裁判所が法律に則って破産を宣告する。商業銀行が破産宣告されたときには、裁判所が国務院銀行業監督管理機構などの関連部門及び関係要員を取りまとめて清算委員会を設置させ、清算を行わせる。
商業銀行の破産清算に当たっては、清算費用を支払い、従業員の未払給与及び労働保険料を支払った上、個人貯蓄性預金の元本及び利息を優先的に支払うものとする。
第72条 商業銀行は解散、撤廃及び破産宣告によって終了する。
第八章 法的責任
第73条 商業銀行が次の各号のいずれかに該当し、預金者またはその他の顧客に財産上の損害を与えたときは、延滞利息の支払いその他の民事責任を負うものとする。
1理由なく預金の元本及び利息の支払いを引き延ばし、拒否する。
2手形引受などの決済業務の規定に違反して、これを決済せず、受払い・記帳をせず、または伝票、手形を押さえ、若しくは規定に反して手形を不渡りにする。
3個人の貯蓄性預金または組織の預金について不正に照会、凍結、差引きの請求に応じる。
4本法の規定に違反して、預金者または他の顧客に損害を与えるその他の行為。
前号に示された状況に該当する場合、国務院銀行業監督管理機構は、是正を命じ、不正所得があった場合、それを没収するものとする。なお、不正所得が5万元以上の場合は、当該所得額の1倍以上5倍以下の罰金を併科する。不正所得がない場合やそれが5万元未満の場合は、5万元以上50万元以下の罰金を併科する。
第74条 商業銀行が次の各号のいずれかに該当する場合は、国務院銀行業監督管理機構が是正を命じ、不正所得があった場合は、不正所得を没収するものとする。なお、不正所得が50万元以上の場合は、その1倍以上5倍以下の罰金を併科する。不正所得がない場合やそれが50万元未満の場合は、50万元以上200万元以下の罰金を併科する。情状が極めて重く、または期日までに是正しない場合は、国務院銀行業監督管理機構が休業・整理を命じ、または営業許可証を取り上げることができる。犯罪に及んだ場合には、法律に則って刑事責任を追及する。
1承認を受けずに付属組織を設置する。
2承認を受けずに分立・合併を行い、または規定に違反して変更事項について承認の申請をしない。
3規定に違反して利率を引き上げ、または引き下げ並びにその他の不正手段を使って預金を受け入れ、貸付けをする。
4営業許可証を貸出したり、貸与したりする。
5承認を受けずに外貨を売買したり、代行して外貨を売買したりする。
6承認を受けずに公債を売買し、または金融債を発行・売買する。
7国の規定に違反して、信託投資と証券経営業務に従事し、自用以外の用途に供する不動産または銀行以外の金融機関及び企業に投資する。
8信用貸付または担保付貸付を関係者に貸し付ける際、ほかの借入者の同種貸付けよりもよい条件で行っている。
第75条 商業銀行が次の各号のいずれかに該当する場合は、国務院銀行業監督管理機構が是正を命じ、20万元以上50万元以下の罰金に処する。なお、情状が極めて重く、または期日までに是正しない場合は、休業・整理を命じ、または営業許可証を取り上げることができる。犯罪に及んだ場合には、法律に則って刑事責任を追及する。
1国務院銀行業監督管理機構による検査や監督に拒んだり、妨げたりする。
2虚偽のまたは重要事実を隠匿した財務報告や財務諸表、統計報告書を提供する。
3自己資本比率、預貸比率、流動性資産比率、同一借入者に対する貸付比率及び国務院銀行業監督管理機構の資産負債比率管理に関するその他の規定を遵守していない。
第76条 商業銀行が次の各号のいずれかに該当する場合は、中国人民銀行は是正を命じ、不正所得がある場合は、それを没収し、不正所得が50万元以上の場合は、その1倍以上5倍以下の罰金を併科する。不正所得がない場合やそれが50万元未満の場合は、50万元以上200万元以下の罰金を併科する。なお、情状が極めて重く、または期日までに是正しない場合は、中国人民銀行は、休業・整理を命じ、または営業許可証を取り上げるように国務院銀行業監督管理機構に提案することができる。犯罪に及んだ場合には、法律に則って刑事責任を追及する。
1承認を受けずに先物外国為替の売買をする。
2承認を受けずにインターバンクマーケットで金融債を発行したり、売買したりをし、または海外で借り入れる。
3規定に違反してコール取引をする。
第77条 商業銀行が次の各号のいずれかに該当する場合は、中国人民銀行は是正を命じ、20万元以上50万元以下の罰金を併科する。なお、情状が極めて重く、または期日までに是正しない場合は、中国人民銀行は、休業・整理を命じ、または営業許可証を取り上げるように国務院銀行業監督管理機構に提案することができる。犯罪に及んだ場合には、法律に則って刑事責任を追及する。
1中国人民銀行による検査や監督に拒んだり、妨げたりする。
2虚偽のまたは重要事実を隠匿した財務報告や財務諸表、統計報告書を提供する。
3中国人民銀行の所定した比率で預金準備金を預けていない。
第78条 商業銀行が本法第73条から第77条まで示された状況に該当した場合、直接の責任者となる取締役や高級管理職及びその他の直接責任者に対して、懲戒処分を行い、犯罪に及んだ場合には、法律に則って刑事責任を追及する。
第79条 次の各号のいずれかに該当する場合は、国務院銀行業監督管理機構は是正を命じ、不正所得がある場合は、それを没収し、不正所得が5万元以上の場合は、その1倍以上5倍以下の罰金を併科する。不正所得がない場合やそれが5万元未満の場合は、5万元以上50万元以下の罰金を併科する。
1承認を受けずに、屋号にに「銀行」という字句がある。
2承認を受けずに、商業銀行の株式総額の5%以上を取得する。
3個人名義の口座を開いて組織の資金を預け入れる。
第80条 商業銀行が規定に基づき国務院銀行業監督管理機関に関連書類や資料を提出しない場合、国務院銀行業監督管理機構は是正を命じ、期日までに是正しない場合は、10万元以上30万元以下の罰金に処する。
商業銀行が規定に基づき中国人民銀行に関連書類や資料を提出しない場合、中国人民銀行は是正を命じ、期日までに是正しない場合は、10万元以上30万元以下の罰金に処する。
第81条 国務院銀行業監督管理機構の承認を受けずに、無断で商業銀行を設立し、または不正に公衆の預金を受け入れ若しくは形を変えて公衆の預金を受け入れ、犯罪に及んだ場合は、法律に則って刑事責任を追及し、その上、国務院銀行業監督管理機構はこれを取り締まる。
商業銀行営業許可証を偽造、変造、譲渡し、犯罪に及んだ場合は、法律に則って刑事責任を追及する。
第82条 借入者が詐欺の手段を使って融資を受け、犯罪に及んだ場合は、法律に則って刑事責任を追及する。
第83条 本法の第81条、第82条で示された状況に該当するが、犯罪までに至らない場合、国務院銀行業監督管理機構は、その不正所得を没収し、不正所得が50万元以上の場合は、その1倍以上5倍以下の罰金を併科する。不正所得がない場合やそれが50万元未満の場合は、50万元以上200万元以下の罰金を併科する。
第84条 商業銀行の職員が職務上の立場を利用して、賄賂を要求・収受し、または国の規定に違反していろんな名目でリベート、コミッションを受け取り、犯罪に及んだ場合は、 法律に則って、刑事責任を追及する。犯罪までに至らない場合は、懲戒処分を行うこと。
前項に示された行為があり、貸付けまたは担保を提供することにより損害を与えたときは、全部または一部の賠償責任を負うものとする。
第85条 商業銀行の職員が職務上の立場を利用して、自行または顧客の資金を横領、流用または侵奪し、犯罪に及んだ場合には、法律に則って刑事責任を追及する。犯罪までに至らない場合は、懲戒処分を行うこと。
第86条 商業銀行の職員が本法の規定に違反して職務を怠って、損害を与えたときは、懲戒処分を行うものとし、犯罪に及んだ場合は、法律に則って刑事責任を追及する。
規定に違反し、私情にとらわれて親族、友人に貸付けまたは担保を提供することにより損害を与えたときは、全部または一部の賠償責任を負うものとする。
第87条 商業銀行の職員が在職中に知り得た国家秘密、トレードシークレットを漏らした場合は、懲戒処分を行うものとし、犯罪に及んだ場合は、法律に則って刑事責任を追及する。
第88条 組織または個人が商業銀行に貸付けまたは担保を強要した場合には、直接の責任を負う担当管理者その他の直接責任者または個人に懲戒処分を行うものとし、損害を与えたときは、全部または一部の賠償責任を負うものとする。
商業銀行の職員が単位または個人が商業銀行に貸付けまたは保証を強要するのを拒否しなかった場合は、懲戒処分を行うものとし、損害を与えたときは、相応の賠償責任を負うものとする。
第89条 商業銀行が本法の規定に違反した場合、国務院銀行業監督管理機構は、情状を合わせて一定期間ないし一生涯その直接担当する取締役や高級管理職の職務資格を取り消し、直接の責任を負う取締役や高級管理職及びその他の直接責任者が一定期間ないし一生涯銀行業に従事するのを禁ずることができる。
商業銀行の行為が犯罪までに至らない場合、直接の責任を負う取締役や高級管理職及びその他の直接責任者に対して、警告を行い、5万元以上50万元以下の罰金を処する。
第90条 商業銀行及びその職員は国務院銀行業監督管理機構と中国人民銀行の処罰の決定に不服があるときは、「中華人民共和国行政訴訟法」の規定によって裁判所に訴訟を提起することができる。
第九章 付則
第91条 本法の施行前に、国務院の規定に従って設立承認を受けた商業銀行には再度審査、承認の手続きをとらないものとする。
第92条 外資系商業銀行、中外合弁商業銀行、外国商業銀行支店には本法の規定を適用し、法律、行政法規に別段の定めがある場合は、その規定によるものとする。
第93条 都市信用協同組合、農村信用協同組合が預金、貸付け及び決済などの業務をするときは、本法の関連規定を適用する。
第94条 郵政企業が商業銀行の関連業務を行う場合は、本法の関連規定を適用する。
第95条 本法は1995年7月1日から施行する。
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