企業会計準則--棚卸資産
序言
1.本準則は棚卸資産の会計処理および関連情報の開示を規定する。
2.本準則は、下記の事項には適用しない。
(1)工事契約により形成された建設仮勘定
(2)農業企業が収穫した農産物および採掘企業が採掘した鉱物資源
(3)家畜などの農業事業と関係のある生物資産
(4)企業結合により取得した棚卸資産の当初認識
定義
3.本準則において使用する用語を以下のように定義する。
(1)棚卸資産とは、企業が通常の経営過程において、販売を目的として保有している製品•商品、または販売を目的とする生産過程にある仕掛品、あるいは生産過程もしくは役務の提供にあたって消費される原料、材料等をいう。
(2)正味実現可能価額とは、通常の営業過程において、棚卸資産の予想売価から、完成までに要する見積原価、販売に要する見積費用および関連する税金を控除した額である。
(3)製造間接費とは、企業が製品の生産と役務の提供により発生した各項目の間接費用をいう。
認識
4.次の2つの条件を同時に満たすとき、棚卸資産として認識される。
(1)棚卸資産がもたらす経済利益が企業に流入する可能性が高い。
(2)棚卸資産の取得原価が、信頼性をもって測定できる。
初期測定
5.棚卸資産はその原価に基づいて記帳しなければならない。棚卸資産の原価には、購入原価、加工費、およびその他の原価を含む。
購入原価
6.棚卸資産の購入原価は、一般的に購入価格、輸入関税とその他の税金、運送費、荷役費、保険料および棚卸資産の購入に直接要するものを含む。商品流通業の棚卸資産の購入原価には、購入価格、輸入関税とその他税金などを含む。
加工費
7.棚卸資産の加工費には、直接労務費および一定の方法に基づいて配賦される製造間接費を含む。
8.企業は製造間接費の内容に基づいて、合理的な配賦方法を選択しなければならない。配賦方法は、一般的に労働者の賃金、労働者の労働時間、機械の稼働時間、消費した原材料の数量あるいは原価、直接原価(原材料、燃料、動力、労働者の賃金、福祉費の合計)、製品生産量等に基づいて配賦する方法があり選択できる。
9.1つの生産過程で、2種類のあるいは2種類以上の製品を同時に生産する場合がある。たとえば、連産品、主製品と副産物を生産し、かつ製品ごとの加工費を個別に識別できない場合は、合理的な方法で加工費を製品に配賦しなければならない。
連産品の加工費については、一般的に売価法、実物数量法等の配賦方法が使われる。主製品と副産物の加工費が配布される際、通常は、まず副産物の加工費を確定し、その差額を主製品の加工費として確定する。
その他の原価
10.その他の原価とは、購入原価、加工費以外を指し、棚卸資産が現在の場所および状態に至るまでに発生したその他の支出をいう。
たとえば、特定の顧客のためにデザインしたデザイン費用等である。
11.下記の費用は、棚卸資産の原価には含めず、発生時に当期費用として認識するべきである。
(1)直接材料費、直接労務費および製造間接費のうちの異常な金額。
(2)保管費用(製造工程中、次の製造工程に移る前に必要な保管費用は含まない)
(3)商品流通業の商品仕入れの際に発生する輸送費、荷役費、保険料、梱包費、保管費などの費用。
その他の方式により取得する棚卸資産の原価
12.非貨幣性資産による取引により獲得した棚卸資産の原価は、「企業会計準則--非貨幣性資産による取引」の規定により確定する。
13.投資者が投入した棚卸資産の原価は、各投資者が認識した価格で確定する。
14.債務再構築により取得した棚卸資産の原価は、「企業会計準則ー-債務再構築」の規定により確定する。
15.贈与により取得した棚卸資産の原価は、以下の状況によって確定する。
(1)贈与側が関連証憑を提供した場合、その証憑上に明記された金額に、支払うべき付随する税金•費用を加算して確定する。
(2)贈与側から関連証憑の提出がない場合、同類あるいは類似の棚卸資産の市場価格に基づいた見積金額に、付随する税金•費用を加算して確定する。
16.棚卸差益となる棚卸資産の原価は、同類あるいは類似の棚卸資産の市場価格に準じて、確定しなければならない。
払出し棚卸資産の原価の確定
17.企業が各種類の棚卸資産の実際状況により、払出し棚卸資産の実際原価を確定する。方法として個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法および後入先出法などが採用できる。互換性のない棚卸資産、および特定のプロジェクトのために購入あるいは製造された棚卸資産は、通常、個別法によって払出し棚卸資産の原価を確定する。
期末における測定
18.棚卸資産は、会計期末に原価と正味実現可能価額のいずれか低い額で測定されなければならない。
19.企業は棚卸資産の正味実現可能価額を確定する際、信頼性のある証拠に基づいて行わなければならず、かつ、その棚卸資産の保有目的、後発事象の影響などの要素を考慮にいれなければならない。
20.生産に使用する目的で保有する原材料等は、それを使用し生産した製品の正味実現可能価額が原価以上である場合は、原材料は原価に基づいて測定されなければならない。
原材料の価格が下落し、製品の正味実現可能価額が原価より低くなった場合、原材料は正味実現可能価額で測定されなければならない。
21.販売契約あるいは役務提供契約の履行のために保有している棚卸資産は、通常、契約価格に基づいて正味実現可能価額を算定する。
もし企業が販売契約の注文数量より多く棚卸資産を保有している場合は、超えた部分の棚卸資産の正味実現可能価額は、一般的な販売価格に基づいて算定されなければならない。販売用の原材料等は、市場価格に基づいて正味実現可能価額を算定する。
22.棚卸資産低価評価損失引当金は、棚卸資産の項目ごとに個別で計上しなければならない。しかし、目的、最終利用先が類似しており、同一地区で生産、販売が行われる系列製品と関連し、かつそれを当該系列のその他の項目と区別して棚卸資産の見積りをすることが困難であるような状況では、他の項目と合わせて計上することができる。数量が非常に多いもの、単価が比較的安いものも棚卸資産の類別ごとで計上ができる。
23.企業は毎期、棚卸資産の正味実現可能価額を新たに確定しなければならない。棚卸資産を評価減した過去の原因が消失した場合には、減額した金額を回復すべきであり、すでに計上した棚卸資産低価評価損失引当金の範囲内で戻入れをし、その戻入れ金額は、棚卸資産低価評価損失引当金から控除しなければならない。
棚卸資産原価の振替え
24.販売された棚卸資産の帳簿価額は、その関連収益が認識される期間に、費用として認識されなければならない。
25.正味実現可能価額への棚卸資産の評価減額は、評価減の計上期間に費用として認識されなければならない。
26.企業は合理的な方法で、消耗品や包装物の償却を行い、原価費用に計上しなければならない。償却方法として、一括償却法、五五償却法等を使用することができる。
27.棚卸差損あるいは破損した棚卸資産による損失は、発生期間の当期損益に計上しなければならない。
開示
28.企業は下記の棚卸資産の関連情報を開示しなければならない。
(1)原材料、仕掛品、製品等の棚卸資産の当期期首残高および期末帳簿価額と総額
(2)当期計上された棚卸資産低価評価損失引当金と当期に戻入れた棚卸資産低価評価損失引当金
(3)棚卸資産の取得方法および消耗品と包装物の償却方法
(4)棚卸資産低価評価損失引当金の計上方法
(5)棚卸資産正味実現可能価額の確定根拠
(6)払出し棚卸資産の原価の確定に用いた方法
(7)債務の担保となった棚卸資産の帳簿価額
(8)後入先出法により確定した払出し棚卸資産の原価と先入先出法、総平均法あるいは移動平均法を適用して確定した払出し棚卸資産の原価との差異
(9)当期費用として認識された棚卸資産の原価、たとえば主要営業業務原価等
経過措置
29.本準則の施行日以前に取得した棚卸資産は、低価評価損失引当金について遡って修正する以外、遡及調整を行わない。
附則
30.本準則は、2002年1月1日より施行する。
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